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技術紹介 2026.02.04

工場遮熱対策における稟議書の策定



工場の暑さ対策(遮熱対策)は、現場にとっては切実な問題ですが、経営層にとっては「直接利益を生まないコスト」と見なされがちです。
そのため、単に「暑いから何とかしたい」という感情的な訴えだけでは、稟議を通すことは困難です。

本記事では、経営層を納得させ、遮熱対策の予算を勝ち取るための「通る稟議書」の作成ポイントと、すぐに使える構成案(テンプレート)を解説します。

 


1. 経営層が承認したくなる「4つの視点」



 

稟議書を書く前に、対策の目的を以下の4つの視点のいずれか(あるいは組み合わせ)に落とし込む必要があります。経営層の関心事は「投資対効果(ROI)」と「リスク回避」です。
 

① コスト削減(省エネ)

最も説得力が高い指標です。遮熱塗料や遮熱シートの導入により、空調(エアコン)の稼働効率がどれだけ上がり、電気代がいくら下がるかを試算します。

  • キーワード: デマンド値の低減、電気料金削減シミュレーション、投資回収年数


② リスクマネジメント(安全配慮義務)

近年、最も重視される視点です。熱中症による労災が発生した場合の企業リスク(社会的信用の失墜、損害賠償、操業停止)を提示します。
「安全配慮義務違反」にならないための予防措置であることを強調します。

  • キーワード: WBGT値(暑さ指数)、労働安全衛生法、BCP対策


③ 生産性・品質の向上

猛暑による機械のオーバーヒート(チョコ停)や、作業員の集中力低下による歩留まり悪化を防ぐという視点です。

  • キーワード: 設備保全、不良率の改善、労働生産性


④ SDGs・脱炭素経営

CO2排出量削減に直結するため、企業の社会的責任(CSR)や環境目標の達成手段としてアピールします。

  • キーワード: CO2削減量、カーボンニュートラル、環境経営

 


2. データ収集:稟議書の「証拠」を集める



 
 

説得力を持たせるには、定性的な言葉よりも定量的なデータが不可欠です。
 

  1. 現状の温度データ: サーモグラフィや温度計を使い、屋根表面温度、室内天井付近の温度、作業エリアの温度を記録します。
    「午後の工場内は38℃に達している」という事実が必要です。

  2. 光熱費の現状: 夏場(7〜9月)の電気料金明細を用意し、空調コストが経営を圧迫している現状を可視化します。

  3. ベンダーからのシミュレーション: 施工業者に依頼し、「導入後の温度変化予測」と「省エネ試算表」を入手します。

 


3. 【実例】遮熱対策稟議書の構成案

以下は、「屋根への遮熱塗装」を想定した稟議書の構成テンプレートです。
 

件名

第1工場屋根への遮熱シート工事(スカイ工法)の実施について
 

1. 目的

工場内作業環境の改善による熱中症予防、空調負荷軽減による電力コスト削減、および屋根の延命化(資産保全)。
 

2. 現状の課題

  •  労働環境の悪化(熱中症リスク): 夏季の工場内温度は平均38℃(最高41℃)を記録。屋根からの「輻射熱」により体感温度はさらに高く、休憩回数の増加による生産性低下を招いている。

  • エネルギーコストの増大: 外気および屋根からの熱侵入により空調効率が悪化。昨今の電気料金高騰と相まって、夏季の電力コストが前年比120%となっている。

  •  屋根の老朽化:経年劣化によるボルトのサビ等が見られ、将来的な雨漏りリスクも懸念される。


3. 提案内容(対策案)

第1工場屋根(金属折板葺き 1,000㎡)に対し、遮熱シート「サーモバリア」の施工を行う。

  • 採用工法: スカイ工法(屋根外遮熱)

  • 選定製品:遮熱シート「サーモバリア(スカイシート)」

  • 選定理由: 反射率97%のシートで熱を根本から遮断することで塗料を凌ぐ温度低減を実現し、定期的な塗り直し不要による長期的なトータルコストの削減に加え、認定施工店による防水・補修も同時に行えるため。


4. 期待される効果(投資対効果)

  • 温度低減効果: 屋根表面温度を外気温と同等まで低下させ、室内温度を最大約11℃低減させる見込み(メーカー実証データより)。

  • コスト削減: 空調消費電力を約30%削減。年間約〇〇万円の電気代削減効果が見込まれ、約〇年で投資回収が可能。

  •  資産保全(LCC削減): 紫外線や雨から屋根材を直接保護するため、大規模な「葺き替え工事」の時期を大幅に先送りできる。


5. 予算(概算費用)

金 3,500,000 円(税別) ※内訳見積書 別紙添付
 

6. スケジュール

  • 稟議承認後、〇月中旬発注

  • GW期間(または盆休みなど)を利用して施工

  • 〇月下旬 完工予定


7. 添付資料

  1. 見積書(3社相見積もり)

  2. 電気料金削減シミュレーション(業者作成)

  3. 現状の工場内温度分布図(サーモグラフィ画像など)

 


4. 承認率を高める「プラスα」のテクニック

 


相見積もりは「松・竹・梅」で用意する。

単一の提案では「高いか安いか」判断できません。

  • 松: 遮熱シートや二重屋根(結果的にコストが抑えられる)

  • 竹: 遮熱塗装(コストと効果のバランスがとりやすい)

  • 梅: スプリンクラー設置(安いが維持費がかかり、効果は限定的)
このように比較し、「なぜ今回は『松』なのか」を論理的に説明します。



補助金・助成金の活用を明記する

自治体や国によっては、省エネ改修に対する補助金が出ている場合があります(例:環境省のSHIFT事業など)。「補助金を使えば実質負担は〇〇円になります」という情報は、最強の切り札になります。
 

「やらない場合のリスク」を強調する

「もし今年やらなければ、電気代高騰で〇〇万円の損失が続く」「従業員が倒れた場合の損害」など、何もしないことが経営上のデメリットであることを伝えます。

 


まとめ

 

工場遮熱対策の稟議書は、「現場の声(定性)」を「経営の数字(定量)」に翻訳する作業です。

単に「暑いから塗装したい」ではなく、「エネルギーコストを削減し、事業継続リスクを回避するための投資である」というロジックを構築することが、承認への近道となります。まずは現場の温度測定と、昨年夏の電気代明細の確保から始めましょう。

 


 

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